労務のご相談を受けていると、「ネットでこう書いてあったんですが」「同業の○○さんはこう言っていました」といったお話を伺うことがあります。もちろん、ネットで情報を調べたり、まわりの方に相談されたりすること自体は、とても大切なことだと思います。いろんな情報に触れて、自分で考えてみることは、何より大事な姿勢です。
ただ、その情報がいつも正確で、すべてのケースに当てはまるとは限らないのが難しいところです。法律や制度は、細かい条件によって内容が変わったり、年々改正されたりしますので、どうしてもネットや噂レベルの情報では、誤解が生まれやすくなってしまいます。
それでも、「ネットや同業者のほうが正しい」と強く信じておられると、こちらがどれだけ根拠を示しても「そうは思いません」と受け入れていただけないこともあります。そんな時、私は「エコーチェンバー効果」や「ダニング・クルーガー効果」といった言葉を思い出します。
エコーチェンバー効果とは、自分と似た意見ばかりを聞くようになると、その考えがますます強くなり、他の意見が入りづらくなってしまう現象のことです。SNSや検索エンジンなどでは、自分の好みに合わせた情報がどんどん出てくるため、いつのまにか「これが正しいんだ」と思い込んでしまいやすいのです。
また、ダニング・クルーガー効果は、知識が少ないうちはそのことに気づかず、自信ばかりが先に立ってしまうという心理的な傾向です。反対に、知識が深くなると「自分にはまだまだ分からないことがある」と、慎重な姿勢になると言われています。
私たち社会保険労務士は、できるだけ正確で中立な情報をお伝えするよう心がけています。法律や労務の世界は、ほんの少しの条件の違いで対応が変わることも多く、似ているようでまったく違う判断が求められることもしばしばあります。
ですから、もしネットなどで見た情報があったとしても、「自分のケースに本当に当てはまるのかな?」と、一歩立ち止まって考えてみていただけるとありがたいです。少しだけ視野を広げてみることで、よりよい判断につながるかもしれません。
そして、私たち専門家の意見にも、ぜひ耳を傾けてみてください。皆さんの立場に寄り添いながら、最善のアドバイスができるよう、日々学び続けていますので、お気軽にご相談ください。